総務省は5月2日、「常勤職員の給与改定が行われた場合における会計年度任用職員の給与に係る取扱いについて」を、5月8日には、「地方自治法の一部を改正する法律の公布及び施行について」の通知を発出し、国会審議を受けての人事院通知の改正、地方自治法改正による法制化の下で、自治体に対応を求めています。
いずれも予算措置を伴うことから、自治体当局に予算要求と条例改正の準備を進めるよう取り組みを強めましょう。
給与改定の4月遡及は情勢適応原則から当然
会計年度任用職員制度に移行後初めての給料表引上げとなった昨年度は、区では「4月1日改定」とされていながら実施は翌年度とされました。
昨年の臨時国会での国家公務員の給与法審議の中で、国の非常勤職員の給与改定時期について、正規は4月改定なのに非常勤は給与法改正後の月からと扱いが異なることを指摘され、河野太郎大臣が「常勤職員と同様に」と答弁したことから、人事院は今年3月、非常勤職員の給与改定の通知を改正しました。
これを受けて総務省は次のように通知しました。
改正により常勤職員の給与が改定された場合における会計年度任用職員の給与については、改定された常勤職員の給与の種類その他の改定の内容及び当該会計年度任用職員の任期、勤務形態等を考慮の上、改定の実施時期を含め、当該常勤職員の給与の改定に係る取扱いに準じて改定することを基本とする。
現在、東京都は人勧の改定率で翌年度から、区は実施時期が明記されていなかったものを、今年度からは正規と同時期にするよう求めています。人勧が情勢適応原則で「民間準拠」を根拠にしている下では、4月に遡って給料表が改定されたならば、給格付けされている会計年度任用職員にも適用されるのは当然です。
「自治体の事情」を容認する「マニュアル」は修正を
総務省は通知に合わせて「マニュアル」を改定しましたが、「自治体の事情」で対象の限定や時期の変更を容認しています。追加されたものは次のとおりです。
【新規】問13―9 ①
常勤職員の給料表に改定があった場合、非常勤職員の給与改定についてはどのような取扱いをすればよいか。
○ 常勤職員の給与が改定された場合における会計年度任用職員の給与の取扱いについて
は、改定された常勤職員の給与の種類その他の改定の内容及び当該会計年度任用職員の任
期、勤務形態等を考慮の上、給与改定の実施時期を含め、当該常勤職員の給与の改定に係
る取扱いに準じた改定を基本としていただきたい。
○ なお、給与改定の実施時期を常勤職員に準じることとする会計年度任用職員の範囲については、国の取扱いを参考にしつつ、各地方公共団体の実情を踏まえ、適切に設定していただきたい。
※ この範囲については、人事管理運営協議会幹事会申合せにおいて、除外する者を「委員、顧問、参与その他これら類似する職務に従事する非常勤職員」、「特定の時期に一時的(任期が3か月以内) に任用される非常勤職員」や「勤務日数が少ない(出勤すべき日が平均週2日未満相当) 非常勤職員」を対象としている、と注記しています。
東京都は時間比例で支給していますが、区は「週15時間30分未満かつ2日未満」を除外しており、これを時間比例に改めさせることが必要です。
「減額改定」の「翌年度先送り」は正統な要求
「マニュアル」改定で注目できるのは、次のとおり減額改定の場合、実施時期を正規職員と併せなくてもよいとしています。自治体当局には設問前段を悪用させないよう要求しましょう
【新規】問13―9 ③
増額改定の場合に、退職者への遡及改定の事務が困難であることや、仮に減額改定の場合、退職者の減額ができず在職者との間に不均衡が生じることを考慮し、遡及改定の対象者を国の取扱いと異なるものとしてよいか。
○ 各地方公共団体の実情を踏まえ、適切に設定していただきたい。
この場合、「減額改定」では実施時期を「翌年度」とすることも可能であり、今後マイナス勧告が行われた場合、「不利益遡及反対」の立場から先送り要求は正統なものとなります。
一時金は期末・勤勉手当とも正規職員と同じ月数で条例化を
地方自治法改正の施行通知の中で総務省は、改正のポイントを次のように説明しています。
第二 会計年度任用職員に対する勤勉手当の支給に関する事項
地方公務員法第22条の2第1項第1号に掲げるパートタイムの会計年度任用職員に対し、勤勉手当を支給することができるものとされたこと。(第203条の2第4項関係)なお、地方公務員法第22条の2第1項第2号に掲げるフルタイムの会計年度任用職員については、「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」において、勤勉手当は支給しないことを基本とすることとしているところであるが、改正法の施行にあわせて今後マニュアルを改訂することを予定していること。
第四 施行期日
改正法は、令和6年4月1日から施行するものとされたこと。
この通知の中で触れられている、この間の国会答弁で示された「期末手当と勤勉手当のいずれも支給することが基本」との考え方は、今後予定される「運用通知」や「総務省マニュアルの改定」のなかで周知を検討していくとしています。また自治体当局が心配する財政措置に関わって、「必要な経費」の自治体への調査は現在検討中とのことです。
勤勉手当”相当額”の支給を今年度から~自治労連方針~
自治労連が5月中央委員会で決定した方針では、
① 国の非常勤職員の給与改定の取扱いに準じて、4月遡及に向けて、翌年度改定や正規職員の条例改正施行日の翌月改定とする取扱いを改めるよう当局に求めます。
改定の趣旨が「処遇改善」であることや不利益不遡及の原則から、マイナス改定の場合は遡及しないよう、当局と確認します。総務省に対し、自治体が遡及改定を実施できるよう、財政措置などを求めます。
② 地方自治法改正の趣旨を踏まえ、勤勉手当“相当額”の支給を今年度から求めます。
勤勉手当支給に向けた条例改正を当局に求めるとともに、手当と引換えの月例給引下げ、人事評価制度による成績率反映を許さないとりくみを強めます。
公共一般も、統一要求を作成し、当局に条例化と予算確保の準備を求める取り組みを行う予定です。
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